あまくま blog

「ＡＴＧ映画＋新宿　都市空間のなかの映画たち！」
牛田あや美　著
Ｄ文学研究会　刊

を読んだ。
1962～1974年に、今はなき「新宿文化劇場」で上映された「ATG映画」と、「新宿」という街を結びつけ、その関連性を論じた一風変わった研究本。
実は、筆者が大学の博士論文として作成したものを修正し出版したものだとか。どおりで、ちょっとまわりくどい表現があったり、わかりづらい文章だったり、引用文が多かったりだが、ATG映画を作家論や作品論というところからアプローチするのではなく、「ATG映画」という一括りの中で、場所と映画との関係を主題に考察していることは、いまだかつてない試みであって、こういう論点もあったのだなあと、いたく感心させられた。
巻末資料の、上映記録、雑誌「アートシアター」一覧、邦・洋作品一覧は資料価値大で、これだけの為に、この本を購入しても損はないだろう。値段は高いが。
私自身、年齢的に「新宿文化劇場」に足を運んだことは無いし、勿論当時の作品をリアルタイムで観たこともない。後年名画座においてであったり、ビデオが初見という具合だ。「新宿」にあるATG専門館で、「新宿」を映し出す作品をリアルタイムで観ていたならば、今とは全く違った感想をその作品に対して持っただろうし、感慨を得たのではないかと思うと、すごく悔しい気がする。
因みに、私がリアルタイムで観たATG映画は、1984年6月「有楽シネマ」で上映された「逆噴射家族」以降。筆者は「濹東綺譚」のみだそうで。若い。